日本光線療法協会/光の医学研修会
■太陽光線の大恩を信じよ
アーク光線療法は、ヒトは自然の恵みを受けて生きる生き物の一変種に過ぎず、太陽光線の恵みは欠かせないとの視点から生まれた日光療法が起源の治療法である。昨今、医学とか科学の衣を着て、太陽光線の作用の功には触れず罪を殊更に強調する、換言すれば自然の摂理に従って生きる生き物としての成り立ちを否定するかの如き市場原理に基づく言動が目立つが、結果として健康を害することは自明であり、許されないことである。
光線療法の理念を論ずる際、現代医学の手法と対比して考える必要がある。現代医学の治療法の特徴は、特定病因論、人間機械論をドグマに人為的な手法を進歩させたことから、診断に基づいて病因に直接作用する治療法、いわゆる特異的治療法が用いられている。現代医学の三大療法は 、薬物療法、手術療法、放射線療法とされているが、何れも程度の差こそあれ侵襲を伴う有害、有効な治療法である。治療を行う際、治療の有効性だけでなく、有害性を見極めて行うことが求められるのは、生命すら脅かす恐れがあるからである。
これに対しアーク光線療法は、生命は太陽光線の恵みを受けて誕生し、その影響下で進化したことから、太陽光線の恵みを応用することで生命に潜在的に備わっている神秘的能力の自然治癒力を向上させることを目的にした治療法である。すなわちアーク光線療法は自然治癒力の根幹をなすさまざまな機能を高めて病勢を鎮める治療法であって、病因に直接作用する治療法ではない。このような治療法を非特異的治療法と呼ぶが、無害な侵襲を伴わない治療法と考えて差し支えない。その� �め健康志向の人から病名が付くほどではないが虚弱体質の人や病名は付いたけど治らずに苦しんでいる慢性病の患者まで、どんな人でも使って効果を試してみる価値がある。
現代医学と呼ぶマンモス医学を至上のものと思っている人に光線療法を勧めても、光を当てただけで病気が治るとは容易に信じないが、藁にも縋る思いで使用した人から感謝の言葉を聞くのは稀でない。これは光線療法が自然の摂理によって生かされている生き物の合理性に立脚した治療法だからである。
■ 自然治癒力
生命には生命の存続に欠かせない神秘的な優れた能力、生命の本質と言える自然治癒力が備わっていることに疑いの余地はない。しかし現代医学で用いられている人為的な治療法は自然治癒力を向上させる手法に結び付かないこともあって、現代医学を行う医師の世界で自然治癒力という言葉を聞くことは殆どない。加えて自然治癒力の本態は未だ科学的、医学的に解明途上にあるため、自然治癒力は生命に生来備わっているホメオスタシス(恒常性維持機能)とか免疫応答(自己防衛機能)とか創傷治癒(自己再生機能)とかの意味合いで使われており、自然治癒力が表立って論じられるのは、医学的に説明できない治癒例や癌の免疫療法のような場合を除くと殆どない。しかしあらゆる医療行為は自然治癒力があるから成り立ってい� �ことは明白な事実である。紀元前四世紀に、病には自然なる原因があり、生命の根幹にある内なる自然治癒力が病を癒すと喝破したことで、現代医学の祖とされている医聖ヒポクラテスを始め多くの先人が、太陽光線の大恩を信じて日光療法を医療に取り入れたのは、日光療法が人知の遠く及ばない神秘的能力の自然治癒力を向上させると信じたからであろう。勿論、当時は太陽光線の作用は殆ど解明されていなかったことは言うまでもなく、未だに未知の作用が多々あることは想像に難くないが、アーク光線を浴びれば、未知の作用も含めて自然治癒力の向 上に益するすべての作用を享受できるのである。
■地球のエネルギーの補給源
太陽光線の大恩を端的に示す表現に、ドイツに"Ohne Licht、Kein Leben."(光がなければ生命はない)という格言があることは以前に本研修会で話した記憶があるが、地球の生態系を支えるエネルギーは一方的に消費されてなくなるだけで循環しないため、太陽光線の光エネルギーで補給されなければ、地球の生態系は成り立たないのである。
地球の生態系の生物的要素、すなわち生命の循環に不可欠な生命エネルギーで述べれば、植物(生産者)が光エネルギーを光合成作用で化学エネルギーに転換し、そのエネルギーを動物(消費者)や微生物(分解者)が利用することで生命エネルギーを得る手段を獲得したからこそ、私たちヒトを含めて数千万種とも言われる生命が誕生した。この光合成に欠かせない非生物的要素の� �の循環も光エネルギーに負っていることは容易に理解できることである。
"Wo die Sonne nicht hinkommt、dort kommt der Arzt hin."(太陽の照らないところに医者が来る)は同じくドイツの諺であるが、多くの生き物と同様にヒトも太陽光線の大恩があって創造的進化を遂げた一生命体であり、太陽光線の不足がくる病だけでなくさまざまな病気の危険因子になることからも明らかなように、太陽光線に健康を維持、増進し、自然治癒力を向上させる作用があることは蓋し当然である。
■紫外線量と肌色の進化
近年、オゾン層の破壊もあって、紫外線の功罪ではなく、一方的に紫外線の罪を強調する市場原理が顕著である。しかしその大半は謂れなき非難中傷であり、明日から紫外線がなくなれば生命もなくなる絶対に必要なものなのである。ヒト(生命)が如何に紫外線を必要としているのか、白人、黄色人種、黒人の肌色の違いの進化から考えて見よう。
太陽光線が健康に及ぼす研究史上、最大の発見は今世紀の初頭に抗くる病効果で発見された紫外線のビタミンD生成作用であろう。その後の研究で、ビタミンDは母乳を含めて地上でとれる食品では補えない必須栄養素であることが分かり、紫外線を浴びてビタミンDを生成するのが自然の摂理の決まり事で、紫外線を浴びられない環境では容易にビタミンDが欠乏する(くる病)� �とが明らかにされた。
このなくてはならない紫外線の恵みを受けるため、アフリカで誕生した人類が数百万年の歳月をかけて各地に移り住む過程で肌の色を変えたのである。日焼けは紫外線が皮下の基底細胞層のメラニン形成細胞を刺激して、黒色のメラニン色素を産生するために起こる生理現象であるが、メラニン形成細胞の密度に肌色の違いによる差はなく、作用が違うだけとされている。すなわち北欧など紫外線量の少ない地方に住む白人は、ビタミンDの生成を可能な限り助けるためメラニン色素を産生しないので赤くなっても日焼けはしない。亜熱帯に住む黄色人種は、必要なビタミンDを生成しながら紫外線による遺伝子の損傷を防ぐ皮膚防護層を作るため日焼けをする。熱帯に住む黒人の肌が生来黒いのは紫外線量が豊富� �ため肌色が黒くてもビタミンD生成に支障がないからである。換言すれば、肌色は自然環境の紫外線量に適応して進化したのであり、したがって文明の進歩で肌色の違いを考えずに居住環境を変えれば、ある程度の弊害が出て不思議ではない。
■転倒・骨折・寝たきり
わが国は世界に例を見ない速さで高齢時代を迎えたが、高齢者は誰しも加齢に伴う身体機能や精神機能の低下を防いで自立した社会生活を営む良好な健康状態を維持する健康長寿を願っている。この願いを叶えるというと言う意味合いで、近年、アンチエイジング(抗加齢・抗老化)専門医を名乗る医師まで現れた。しかしアンチエイジングを声高に叫ぶのは自費診療の美容整形医が多く、シワ取り、シミ取り、美白(紫外線カット関連商品)、ホルモン補充療法、サプリメントが大勢を占めているのが実情である。
光線医学の立場でアンチエイジングについて言えば、生命は人智を超えた自然の摂理で生かされており、健康長寿に日光の恵みが欠かせないことを認識することから始めなければならない。日光の恵みで最も知 られているのはビタミンDを生成することであるが、紫外線で日焼けするのとビタミンD生成は同意で、美白とは相容れないものである。
高齢者ほど衰えを自覚するため、人に迷惑を掛けたくない思いは強いが、思い通りにならないのも事実である。その一半の事由に紫外線のビタミンD生成能が70代で20代の人の半分になることがある。実際、高齢者を対象にした調査では5割以上の人がビタミンD欠乏状態にある。ましてや中高年女性が美白をアンチエイジングと思い込まされて、日焼けを避ければ、ビタミンDが欠乏する可能性が著しく高まることは間違いない。
ビタミンDが欠乏すると骨粗鬆症が増悪することは知られているが、筋組織が破壊され筋肉量が低下し筋力を保てなくなることを知る人は少ない。筋障害をミオパチーと呼ぶ� ��、この筋力低下はビタミンD欠乏状態が解消すると改善することから、ビタミンD反応性ミオパチーと呼ばれている。症状は筋力が衰える高齢者で顕著に表れ、転倒し易くなり、骨折、寝たきりのリスクを高めることに繋がるのである。
アンチエイジングの観点を含めて、皆さんが紫外線の是非についてどう判断されようと自由であるが、美容整形医の言を信じて美白を追い求めて寝たきり老人になったのでは様にならない。
■アーク光線を暮らしに
自然治癒力の本態は、固定したものでなく、シーソーのように常に変動するものとして捉えなければならない。すなわち病気になるかならないか、病気になって治るか治らないかを決めるのは、各人の自然治癒力が病勢を上回るか否かによって決まるのである。
生命には、自己の身体に起きたあらゆる事象を即座に的確に診断する能力があり、即座に治癒機転を促進する自然治癒力が備わっている。例示すれば、神経系機能が外傷を即座に診断して自己に知らせる同時に、炎症反応を起こして治癒を促すから治るのであり、細胞が発癌遺伝子細胞に変異したことを免疫監視機構がキャッチして除去するから癌にならずに済んでいるのである。
わが国では病は気からと言い伝えられており、英語の諺にCare killed the cat、(� �が九つあり執念深く長寿の猫でさえ心配のため死ぬ)と言うのがある。この心の問題と病気の関係は近年急速に進歩した分野である。うつ状態で免疫力が低下する一方、プラス思考や笑いが免疫力を高めることが明らかになり、中枢神経系と免疫系と内分泌系が相互に緊密に影響しあっていることが解明され、精神神経免疫学しいう新しい分野が生まれたか、この研究が示しているように、自然治癒力は容易に上がり下がりするのである。アーク光線療法には、やはり以前に本研修会で述べたが、紫外線によって生成されるビタミンDのカルシウム代謝調節作用と細胞分化誘導作用、可視線の自律神経、内分泌系の機能を調整する作用、赤外線の温熱作用による熱ショック蛋白質の内因性生体防御作用などのさまざまな作用があるが、健康を� ��り、病を未然に防ぎ、病を癒す自然治癒力の向上に大きく関わっている。
最後に "地球に生息するすべての生き物は自然環境に適応して生かされている生き物であって、自然の摂理は生き物の都合に合わせて変わることはない"、この単純明快な事実に気付いて、人工小型太陽のアーク光線療法を暮らしに取り入れることで、病に勝る自然治癒力を手に入れられることを願って話を終えたい。
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